稲葉浩志「Stay Free」を語る|イナソロ一日一曲

動画書き起こし

イナソロ一日一曲!今回は「Stay Free」

自由ってどんなものかと。いま、スクランブル交差点のど真ん中をうろうろしてまして、自由を感じています! でもすぐ信号は…あ、赤になっちゃう。かりそめの自由です。

鳥の名づけから始まるワケ

「Stay Free」歌い出しの歌詞、私、大好き。ちょっと語らせて?

「見たことのない鳥ならば 君が名前をつければいい」

「誰かがその昔に 始めた時と同じように」

…ここには、「過去へのまなざし」と「その過去を乗り越えていく自由」の二つが一気に描かれているんです。今ある当たり前のものっていうのは、さかのぼれば誰かがかつて始めたものであるはず。スズメ、カラス、ヒヨドリ、ツグミ、ルリビタキ…。なんでもいいんですけど、鳥の名前だって、歴史をたどれば誰かがつけたもの。

でも、あなたが初めて見つけた鳥であるならば、そんな歴史など気にしないで、あなたが名前をつけちゃえばいいじゃん! あなたの感性で、あなたの見える世界を切り取り、どんな音の並びで? どんな声で? その世界に名前をつけるのか…。

そういう自由が「名前をつける」って行為には隠されていると思うんです。そのことを歌っているから、「Stay Free(=自由なままで)」っていうタイトルの歌い出しが「鳥に名前をつける」行為から始まってるんだと思います。

名前をつけるってワクワクしますよね。ペットでもお子さんでも、あるいは音楽をやってる人だったら楽器に名前つけたりね。私はカーペンターズのボーカルの「Karen」っていう名前を、かつて楽器につけてました。人々の心に沁みわたる音が出るようにと、その名前をつけましたが、そんなことはずーっと忘れてて今思い出しました(今かい)。

矛盾する自由のイメージ

「Stay Free」のサビでは「自由ってどんなものでしょ」と繰り返し問われます。1番は「ぞっとするほど寂しくて 狂おしいほど美しいもの」…矛盾する概念が並べられるんですよね。それが稲葉さんにとっての自由なんだと思います。一筋縄ではいかないもの。

2番は「三日月のようにとんがって 太陽のように燃え上がるもの」…美しいね! 3番は「獣のように乱暴で 儚い花のように気高いもの」。この「気高い」って、B’zの「Queen Of The Night」つまり月華美人という花を彷彿とさせます。そこもまた好きですね。

そういうふうにいろんなかたちで「自由とはこういうもの」と補助線を引いていくように、稲葉さんなりに自由を描いている曲です。

稲葉さんと「自由」のテーマ

稲葉さんと「自由」というのは密接に絡み合っているテーマです。思いつくだけでもたくさんありますね。私がまずパッと思い浮かぶのは『MAGIC』に収録されている「Freedom Train」の間奏のセリフです。あれは私が「自由とは何か」って考える最初のきっかけだったと思います。

みなさーん!!
なにかにつけて 自由自由って言いますけど、
別に自由はラクなもんでも、あなただけのものでもありませんよー
自由への道は 時として……寂しく、長く、そして険しいのですっ!

ってやつだったと思いますが、ちょっと後で自己採点しておきます。まぁそんなセリフがあって「自由ってのは…大変なんだなぁ」って一色少年(15)は当時思ったものでした。

あとは「コスト(自由の代償)」ですね。未発表曲ですが、

愛情を注いでくれた
あなたから逃げてしまった
刺すような胸の痛み それが自由の代償
あぁ もう逃げられない

これはまさに自由と責任を描いているものですし、あとはそんな責任をほっぽり出してどっか行っちゃう「孤独のRunaway」や「Pleasure」シリーズもあります。

そうやって形を変えて、たくさん“自由”というものを稲葉さんは描いてきているのですが、それはやっぱり稲葉さん自身が「自由」と「責任」みたいなところの葛藤の中で生きてきた人だからでしょうね。

先生になるために教育実習に行ったけど途中で辞めちゃったとか、その後フリーターみたいな時代を過ごしたとか。そういう時に親からは「あなたの知ってるおじさんの誰々がこないだ亡くなりました」みたいな手紙を送られて、帰ってこいとやんわり言われるみたいな…。

きっと、そういう時期にいろんなことを感じたり考えたりしたのではないかと想像します。何年かの下積み時代ではあるけど、本人からしたら絶対長い期間だと思いますから…。その時にアイデンティティが形成されたじゃないかなぁ? それが作家性になってるんだと思っております。

他アーティストが歌う「自由」

自由ってやっぱり、他の歌手もたくさん歌ってますよね。例えば奥田民生さんの「さすらい」。

さすらおう この世界中を
ころがり続けて うたうよ 旅路の歌を

すごく伸びやかな世界観です。「周りはさすらわぬ人ばっか 少し気になった」という歌詞もありますが、周りへの掘り下げって全然ないんですよ。そこがやっぱり稲葉さんとの大きな違いで、「目の前の自由をさすらいますよ」っていう宣言をする! それもまたかっこいいあり方ですよね。どっちも好きですけど、私はやっぱり稲葉さん派かなっていうところは強く言いたいなって思います(笑)

あとは小沢健二さんの「ローラースケート・パーク」っていう曲。めちゃくちゃオススメで!

ありとあらゆる種類の言葉を知って
何も言えなくなるなんて そんなバカなあやまちはしないのさ

つまり、最初の鳥の名前の話と同じで、いろんな人がいろんなものにいろんな言葉を名づけている。もういろんな名前が、言葉が発明しちゃってるから、それらをちゃんと知らないと自分では何も言っちゃいけないんじゃないか……と思えてしまったり、自分の感性の発揮の仕方を忘れてしまったりする。

でも「私はそんなあやまちはしませんよ」と。「自分の言葉を自由に紡ぐ、その心の自由は守り続けますよ」っていう意味だと思ってるんですけど、これもまたさらりと軽やかに歌っているのがすごくいいんですよね、小沢健二さん。

そして自由で言えば、同じ岡山出身の藤井風さんの「きらり」ですね。

いろいろ見てきたけれど 私は君がいい

一つを自分で選ぶ、その心の自由。私もいろいろ見てきた中で稲葉さんを選んでいるからこそ、こういうことをやってるんですけれども。藤井風さんの「きらり」のミュージックビデオって、藤井さんがバイクに乗ってるCGで流れてますけれども、稲葉さんの「Stay Free」のミュージックビデオはあれご本人が走ってるんですかね? どうなんでしょうね。

岡山つながり、バイクつながりということで、ぜひUNITEⅡなんかでコラボしてくれないかなって、こっそり期待してるんですけれども。その結果の答え合わせは、そろそろこの動画が出たちょっと先にはできることでしょう。

まあそんなふうに、いろんないい曲がありますよね、自由の歌って。音楽っていいですよね、やっぱり! というわけで、今日は「Stay Free」および自由に関する曲についてのお話でした。

また別の曲でお会いしましょう。おつかれ!

【今回言及した曲】

  • Freedom Train(B’z)
  • コスト(B’z)
  • Pleasure 2008 ~人生の快楽~(B’z)
  • 孤独のRunaway(B’z)
  • さすらい(奥田民生)
  • ローラースケート・パーク(小沢健二)
  • きらり(藤井風)

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