稲葉浩志「Not Too Late」を語る|イナソロ一日一曲

動画書き起こし

イナソロ一日一曲!今回は「Not Too Late」

これも隠れた名曲ですね! 「遠くまで」のカップリング3曲目で、しゃべりたいことがいっぱいあるんですけど…。

すみません、あの、今日5分で終わらせてください! マジで時間がないんです。本当に…。今仕事終わりに、もう急いで撮っているんだけど、ここでしゃべりすぎたらまた編集が間に合わなくなっちゃうから、タイマーかけさせてください(笑)

よーい、スタート!

ドラマのエンディング曲にしたい!

「Not Too Late」は、もし自分が人生で連続ドラマの主人公になるならば、「エンディングテーマをこの曲にしてください」と脚本家や監督に懇願したいような曲です。すごく華やかなサウンドで、バイオリンとかも入っていて、ミドルテンポの心地よいグルーヴが最高です。

イントロがめちゃくちゃ良くて。「ダラン!!」ってドラムから始まるんですよね。「ダラン!!」って2発叩くんですけど、その2発目の「ラン」の時にベースがグリッサンドで「ビューン!」って下にさがる…。ここがめちゃくちゃ低音が効いていて心地よいのです! この2音で酔いしれてください。

さらに、ドゥーンと下がったベースと同時に、バイオリンなどの弦楽器が チュルルルラララーン✨って上がる!

下がるのと上がるのが同時に来て、視界が一気に開ける感じ! 「あ、エンディングだわ。」って、たぶん伝わると思います(笑)ぜひ聴いてみてください。酔いしれてください。

…イントロの2音の話だけで1分半もしゃべっちゃった。やばいやばい。

キーワードは「まだ間に合う」

さて、「Not Too Late」は和訳すると「遅すぎない」という意味なんですけど、歌詞の中では「まだ間に合う」と言い換えられています。つまり、前向きに捉えている。「遅すぎない」=「まだ間に合うから走り出せ」という、ポジティブな曲なんです。

でも、さすがは稲葉さん。ただの“陽キャ”なポジティブさではなく、すごく丁寧に「ポジティブに向かってうつろう、男心の揺れる瞬間」を描いているんですよ…!

もう結論からいきます。最後のサビです。「頬を刺すような冷たい風を切れ」って言ってて、もう走っているはずなんです。だけど、一番最後の行がですね?

本当はわかってる

It’s not too late

…なんですよ。

「本当はわかってる」って、走り出した後で言いますか…? 言わないですよね…?

ふつうは走り出す前に「本当はわかってる、だから今から走ろう」ってなるはずなのに、この曲では走り出した後、まだ「本当はわかってる」「It’s not too late」って言い聞かせながら走っている…。

…ここです!

ここが素晴らしいんです。要するに、まだ揺れているんですよね。走り出した後でも「遅くはないんだ」と自分に言い聞かせながら動き出した。「その瞬間」を切り取って終わる。

だから、完全に迷いが消えて突っ走ってる状態になるとしても、それはまだ先の世界なんです。深いですね。ぜひこの部分に注目しつつ、それまでのストーリーやプロセスも堪能してみてください。

星がささやく世界観

さらに特徴的なのは「星がささやく」描写です。1番のBメロで「涙が滲んで 星がささやいた」というフレーズがあって、直後のサビで、星のささやきの内容が歌われます。

真夜中の道を たった一人で 走れるかい?

という言葉。「星がささやく」という世界観は、他の曲ではあまりなかったんじゃないかな? まるで宮沢賢治のような、人と自然の共存・対話を思わせるファンタジックでノスタルジックな演出です。

2番のサビでも「何が怖いのかも わからないで 震えてる人よ」と、震えている人に星が呼びかけているようなイメージになっていて、ここもすごく印象的です。

(ちょっと時間がやばい……)

1番と2番の場面転換

2番の歌詞で「光が差すように 君が見える」というフレーズがあります。闇の中へ突っ込んでいく状況で、「光が差すように君が見える」。これ、「絶対(的)」や「Overture」の歌詞とも似ているんです。真っ暗な闇の中にポツンと「君」が立っているようなイメージ。

「君」が誰なのか? …それは人それぞれ異なると思うので、ぜひご自身の心に重ね合わせて味わってください!

あと、1番は「君と僕で帰り道」みたいなシーンで始まるんだけど、2番は急に主人公が一人になってしまう。旅立った後みたいな状態で、「君に電話しようか でも何を話そうか」っていう静けさになじめない寂しさが描かれている。

1番から2番への間の部分がごっそり描かれていないので、「あれ? 何があったんだろう?」ってちょっと戸惑いました。その旅だった後の迷いや戸惑いを2番で描くっていうのは「羽」にも似てるなと思いました。

(注:別の解釈について、編集後記で記します。)

優しさを知った戸惑い

私が一番好きな、心に響く歌詞はこちらです。

いつでも誰かに優しくされてないとイヤになる

僕はそんな贅沢モンだったっけ?

めっちゃわかるんですよ、これ…!!

要するに、孤独だった人間が優しさを知ってしまった時に感じる戸惑いだと思うんです。一度優しさに慣れちゃうと、それに甘えてしまっている自分に気づいてしまう。かつての一人でも平気だった自分はどこへ行ったんだろう……みたいな。自分が変わってしまったようで怖い。

その気持ちがわかる人は、きっといるんじゃないかなと思いますね。センチメンタルな感受性の持ち主にぴったりな曲だと思います。

あと、「君に電話しようか でも何話そうか」というシーンは、私の好きなくるりの「東京」という曲にも同じような描写があるんです。

「君」って誰なんだろう? という問いかけが、作品を通じてあるんですよ。くるりの岸田さんが、たしかエッセイで「君は親だったり友達だったり恋人だったり、その時々で違うと思います」といったことを書いていたけど、「Not Too Late」も同じだと思います。

「Not Too Late」とB’z

あ、「Not Too Late」というテーマは、B’zの「破れぬ夢をひきずって」にある「遅すぎるヤツなんていない」という言葉とも重なります。私はこの言葉にすごく励まされてきましたが、「Not Too Late」も同じメッセージですよね。

さらに言えば、中田英寿さんとの対談で稲葉さんが「夢がなくても大丈夫なんですよ」とおっしゃっていたのとも通じる。早くなくてもいい、早すぎなくてもいい、遅すぎることもない。人それぞれ、人生を決める瞬間(モーメント)は違っていて、しかるべき時に、そのスイッチを押せればいいんじゃないかなと思います。

間奏のギターソロとB’z熱の再燃

最後にもう1つだけ! 間奏のギターソロもいいんですよね。たぶんレスポールを使っていて、アレンジャーも務めた寺島さんが弾いてます。

トゥルルゥーー~~ン……!!

…って、チョーキングでピューゥンとギターを唸らせてずっと伸ばす感じが素晴らしい。ピロピロ弾かないからワビサビを感じるし、曲に奥行きを与えているんです。

で、レスポールといえば松本さんを思い浮かべちゃうので、この曲を聴いているとB’zを聴きたくなってしまう(笑)それで久々に『Brotherhood』を聴いたらあらためていいアルバムだなと思いました!

「流れゆく日々」「その手で触れてごらん」「SKIN」っていう、私が勝手に“地味3部作”と呼んでる流れ今すごく刺さって、B’z熱が再燃しています(笑)

イナソロをいくら聴いても、やっぱり最終的にはB’zに帰っていくのかもしれません。

勝手にオススメ作品紹介

…と、言ってるうちに、けっきょく10分くらい経っちゃいました。近所の学校のチャイムが鳴ってるみたいです。

最後にもう1つだけ!

「いつでも誰かに優しくされてないとイヤになる僕はそんな贅沢もんだったっけ?」っていうナイーブな歌詞が響く方におすすめしたい作品があります。

『やはり俺の青春ラブコメは間違っている。』

すごく繊細で、でも卑屈で、コミュニケーション不全の主人公が少しずつ友情を知っていく。読んだことない人はぜひ……とくに男性の方には合ってるかと。語りだすと長くなるのでこの辺にしておきます(笑)

というわけで、今週もありがとうございました! ぜひまた来週、別の動画でお会いしましょう。

おつかれ!

【今回言及した曲】

  • 遠くまで
  • 絶対(的)
  • Overture
  • 破れぬ夢をひきずって(B’z)
  • Don’t Wanna Lie(B’z)
  • そのswitchを押せ
  • 流れゆく日々(B’z)
  • その手で触れてごらん(B’z)
  • SKIN(B’z)
  • 東京(くるり)

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