イナソロ一日一曲!今回は「この手をとって走り出して」。
「こういうのでいいんだよ…!!」
ってね(笑)
全人類がそう言いたくなる曲じゃないかと勝手に思っております。
いや、本当にねぇ、もうこの曲はこの一言に尽きる…。
「こういうのでいいんだよ…!!」
大事なことなので2回言いました。切なくて、ピュアで、甘酸っぱくて、キュンとします。
少女漫画の“最近事情”
最近の少女漫画ってねぇ?(唐突)1話目で付き合うケースもけっこうあって… それはそれで好きなんですけれどもね(実はラブコメ好き)
やっぱり、この曲みたいな“付き合う一歩手前”のピュアな恋愛、片思い。「もしかしたら片思いかもしれない」って躊躇しちゃって告白に踏み切れない。
「この手をとって走り出して」では、そんな甘酸っぱい恋愛模様が、すごく丁寧に繊細に描かれていて、最高の歌詞になっております。
稲葉さんのライナーノーツとインタビュー
『be with!』(会報)に掲載されていた稲葉さんご自身によるライナーノーツには、
女性目線で書いた曲だけど、男もこういう気持ちになることってあると思います(´.-`)
といったことが書かれていました。
…で、その『be with!』に加え『シアン』でも、インタビュアーがこの曲に触れていました。
「ラブソングの作詞の秘訣はなんですか?」って質問してたんです! つまり、それだけこの曲の歌詞がインタビュアーに響いたんでしょうね(笑)
それだけ素晴らしいバラードになっている、ということがわかりますね。
音楽の魅力① 楽器アレンジ
歌詞は言わずもがですが、音楽が素晴らしいですね! 本当に上品に作られています。
まずストリングス! ヴァイオリンなどの弦楽器メインでアレンジされている。J-POPの王道バラード風ですね。こういう曲は、いきものがかりとかaikoさんとか、いろんなアーティストもやっており、そういう上品な王道を行くバラードになってます。
そのサウンドを支えるのがピアノです。ドラムやベースと一緒にピアノが、リズムとか全体の空気を作り、穏やかな心地よい空間を演出しています。やっぱりリズムがしっかり脈打ってる感じがするから、たゆたうような、波打つような、心地よい時間がこの曲の中に流れています。
エレキギターはB’zと比べて圧倒的に控えめですね。なんかチョロチョロ弾いてるんだけど、主張はしない。でも最後のサビの、
「あふれる人波 つきぬけて」
っていうところで一気に前に出てくる! ドラマチックに熱い恋心を演出していて、「ここで来るのか~!!」っていう意外性とともにクライマックスに達します。
ゆるやかな美しいメロディ
今、アレンジ面でどんな楽器がどんなサウンドを作ってるかって話をしましたけれども、サビのメロディーもこれめちゃくちゃいいですね! 美しいです。
「この手をとって 走り出して~ ねえ♪」
ここ、音程の跳躍がないんですよ。階段進行になっている。

(一色が耳コピで作成)
一気にガツンと上がらなくて、ピアノの鍵盤でいうと、隣り合うところへ1つずつ音が移っていく。そんな緩やかなメロディになってるんです。だから下品な感じがない。タララララ~ララララ…って、すごく流麗ですよね。
ファ(ⅳ)の音が多用使われているのも印象的です。ロックではペンタトニック・スケールという音階が頻出するため、ファの音って除外されがち。J-POPでも“4・7抜き音階”的に外されることがままあります。
そんなファが沢山鳴っていると、ちょっとクラシック音楽的な上品さが出てくるんです。それがこの曲のメロディの美しさの、もう一つの正体ですね。ミとファの半音のつながりによる切なさと上品さ。ここもポイントですね~!
でも跳躍は跳躍でアツい
とはいえ、サビにも跳躍はあります。
「ここ↗じゃ~ない どこかへ~♪」
このグッと高ぶるメロディで、稲葉さんの伸びのある声が、ギュッと胸を締めつけてくる! さっきまでのなめらかなメロディとのギャップにやられてしまいますね…。
いやぁ本当によくできたメロディですよ🥺
それ以外のところは、ほとんど階段進行でなめらかに進んでいく。そんなふうに、きわめて特徴的なメロディだと思いますね。
でも言い換えれば地味ってことじゃないですか! 起伏がない、抑揚がないから地味に聞こえてしまいがち。ということは、純粋な歌唱力が試されるメロディでもあると思います。
でも、さすが我らの稲葉浩志。
すごく優しく、甘く、切なく、しかしダイナミックに! 表現力をもって歌ってくれています。
稲葉浩志の歌唱表現
THE FIRST TAKEで「羽」を観た時も感じたんですけど、稲葉さんって音程を正確に当てるためというよりは、強弱やアクセントでメロディを捉えていると思うんですよね。
最近の若いアーティストさんにも、高い音を当てるときに「あ↗あ↘あ↗あ↘あー」って手を動かす方いるじゃないですか(伝われ)。でも稲葉さんそうじゃなくて…。
ヘッドホンのケーブルを握って歌うときの “手綱捌き”(←本人談)を注意深く見ていると、「高い音」のとき、さらには「アクセントを置く強い音」のとき、バシッと空中をたたく動きをしたり、たるんだケーブルを引っ張ってピンとさせたりすることがよくあります。
「ま~るでしら~ない ことだら~け~~♪」
って、バシッと! だからたぶん、高さでじゃなくて強さでメロディを捉えてる。ピッチアクセントの日本語よりも、ストレスアクセントの英語圏のメロディ解釈に寄ってるというか…ロック的な捉え方をしてるんじゃないかな~って。
それが「この手をとって 走り出して」でもすごく表れているんです。一個一個の文字を丁寧に聴くと、意外とメリハリが効いてる。
「ここじゃ~ない どこ~かへ~」
高い音やシンコペーション(裏拍で入るリズム)、小節の1拍目などなど、強く歌ってほしいところをキュッと歌ってくれてる感じがあって。稲葉さんの歌って本当に丁寧だなって、あらためてこの曲で思いましたね。
楽しい時をゆがめてしまう勇気を…
音楽の話がひと段落したので、一応歌詞の話もしときましょうか…と言っても、あんまり語りたくないんですよね、この曲は。だってもう「付き合う前」ってだけで最高じゃないですか。尊いじゃないですか!(笑)
ただ相手を想ってるだけで幸せ、そのさまが幸せっていうね…。聴いてるだけで幸せ。
だからわざわざ言葉で語ってしまうと、それがまさに「楽しい時をゆがめて」しまいそうな気がして、その勇気を出せない…っていう、今主人公の気持ちを味わってるところです。
まあ…関係性がいいですよね、やっぱりこの曲は!
カギは「人波つきぬけて」
好きな歌詞を挙げ出したらキリがないんだけど…2番サビの「話したいことが 体の奥に 雪のように 降りつもる」とか、すごく美しいですよね!
そして「あふれる人波 つきぬけて」。ここも実は良くて。人波をつきぬけるからこそ、この2人が巡り会えて、そこから今度は人波をつきぬける。つまり勢いよく離れていき、2人しか知らない世界に進んでいく、という!
いろんな人の中にいる2人が出会って、2人が人波をつきぬけていくっていう…「社会の中の2人」を感じさせてくれるさりげない1行が「あふれる人波 つきぬけて」だと思うんですよ! だから「人波」って言葉がすごくいい仕事してるなって思いますね。
映画館を出たあとの「まぶしさに目を細め」
あと最初の入り!
「昼間の映画館を出て まぶしさに目を細め」
って、主人公が目を細めたのかと思いきや、そうじゃなくて。
「苦笑いする顔 きらいじゃないよ ほんとに」
って!
あ、これ、あなたの仕草だったのね…! っていう驚きもありつつ、「きらいじゃないよ ほんとに」って言う主人公の思いが尊いですよね~。そう、尊いんだ…ピュアなんだよ…。
あとは「世界中で2人しか知らない 真実を胸にしまって」とか。秘密の共有はラブコメの鉄板ですからね。そういうところもしっかり押さえています(ちがう)
で、あとは海ですね! 「いつか吹いていた 海辺の風を思う」。これはもうね、B’zの「恋じゃなくなる日」の「冷たい風が 僕らを近づける」っていう歌詞。あの風かなって…思わずにはいられないですよね。だから「恋じゃなくなる日」の続編・スピンオフのような妄想をさせてくれる曲でもあると思います。
ちなみに今、お台場の海からお届けしています。
よく見たらここでも○○○○が?
今回はそんなところです。語るまでもない魅力がたくさんあるんで、みなさんもぜひ思い思いのツボが…まさに「心のスイッチ」が人それぞれあると思うので、それを堪能するのがいいんだろうなと思いますね!
いやー…いいですね…!! 「この手をとって 走り出して」「スイッチ」出てきましたね(笑)。なんか突然プラスチックな感じが出てきて「お?」って思ったけど、稲葉さんの頻出ワードですね。
そこについての考察は「そのswitchを押せ」の回にやれたらなと思います。
いやぁ、この曲をヘビロテしてたら、魂が本当に綺麗になりましたね。
私、今日しゃべるためにずーっと聴いてたんですけど、みなさんもぜひ晴れた空とか見ながらね、大切な誰かと聴くのもいいでしょう。ぜひ聴き返してみてはいかがでしょうか?
というわけで、一週間お休みいただいたんですけど、またこんな調子でやっていきますので、お楽しみいただけるように頑張ります!あの、またぜひ明日、別の曲でお会いしましょう。
おつかれ!
【今回言及した作品など】
- 羽
- SNOW(B’z)
- 恋じゃなくなる日(B’z)
- そのswitchを押せ
- いきものがかり(アーティスト)
- aiko(アーティスト)
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