稲葉浩志「Chopsticks」を語る|イナソロ一日一曲

動画書き起こし

イナソロ一日一曲!今回は「Chopsticks」。

この企画で2番目に恐れていた曲がやってきてしまいました。一番恐れていたのは昨日話したとおり「友よ」という曲だったんですけど、立て続けに2番目が来てしまって。

まあ理由は言わずもがなですよね。こんな難しいインスト曲をどう語れと…!!

歌詞もないし、打楽器メインで何をやっているのか分かりにくいと言えば分かりにくいし…というところで。打楽器に詳しいわけじゃないので、あまり語れることはないんですけど、語れるだけ語ってみます。お付き合いいただけたら嬉しいです。

打楽器奏者を路上ナンパ!?

この曲はエピソードが一番面白いかもしれませんね。稲葉さんの過去のライナーノーツ…ご自身で曲について語っている書面を読んで知ったのですが、「打楽器奏者を路上でナンパしてスタジオに連れてきて叩いてもらった」らしいんですよ(笑)

「ナンパ」っていうのはもちろん例えなんですけど、なんかいい演奏をしているお兄ちゃんがいたから「ちょっと来て演奏しない?」って声かけてスタジオに来てもらったらしいですね~。それで叩いてもらったのが稲葉ソロの作品であり、このマニアックすぎる曲であると。

そのときの様子とおぼしき写真が『マグマ』のジャケットの1番後ろにあって…見えますかね?(注:動画で映してます!)

太鼓みたいなのがあってそれを叩いてるお兄ちゃんたちがいて、多分これだと思うんですよ。すごいですよね。稲葉さんって当時すでに有名で、人気絶頂期だったのに、そんなフットワーク軽いことしちゃうんだってね。

たしかエアロスミスのボーカルのスティーヴン・タイラーも、日本に来たとき、路上でエアロスミスのコピーバンドが演奏しているところに乱入して歌ったって話も聞きますし。やっぱロックミュージシャンは自由が根底にあるんだなって思わされます。

「アフリカ産の打楽器」と変拍子

以前「ねがい」の作詞ノートを読み解く配信をしましたけど、そのときに「アフリカ産のパーカッション」っていう文字があったりして。それも思い出しますね。90年代の空気感と関係あるのかは分からないですけど。

「Chopsticks」は8分の7拍子。

トゥンチャンチュクチュク/チャンチュクチュク…

1・2・3・4・5・6・7…

という変拍子ですが、この拍子の曲をやろうと決めていたそうです。驚くべきことに、最初はボーカルもあったそうです! でも最終的にはカットしたと…。

ボーカルありVer.をめちゃくちゃ聴いてみたいですよね。絶対かっこいいぞこれ。いつか公式で公開してほしいなあ。稲葉さん、公式のみなさん、何卒お願いいたします!

ギターとパーカッションの組み合わせ

ギターはおそらくブリッジミュートっていう、ちょっと音を短くこもらせるような奏法で、

「トゥントゥン、トゥルントゥン、トゥントゥン…」

っていうリフを刻んでいて、そこにベースが入ってきます。そしてメロディーが変わる。裏ではずっとアフリカのパーカッションがドコドコ鳴っていて、ドラムも入ってきて、どんどんジメッとしたアンサンブルになっていく曲ですね。

なんだか和風だな…って感じるんですよ。梅雨とか醤油とか味噌とか(笑)

塩気と湿気を感じるんです。

「Chopsticks」の由来

「Chopsticks」ってなんでこのタイトルなのか?

…おそらくこれが理由だろうっていう有名な話があるので、ちょっと紹介します。でも先入観なしにこの先もこの曲を聴きつづけたい人にとってはネタバレになるかもしれないので、ここで動画を閉じてもらえればと思います。

5、4、3、2、1…はい!

Led Zeppelinの「Four Sticks」という曲があります。ハードロックの伝説的なバンドですが、この曲は変拍子で、8分の5拍子や8分の6拍子を行ったり来たりする特殊な曲なんですよ。ボーカルは途中ちょっと入るだけで、打楽器とギターがメインにフィーチャーされているインストに近い曲です。

特殊な拍子とサウンドが似ていることをふまえると「Chopsticks」と「Four Sticks」というタイトルからして、パロディなんだろうな、というわけです。しかも “Sticks” という元のタイトルに対し、「日本人がやってまっせ」というニュアンスで “箸=Chopsticks” を選んだんじゃないかなー? って思います。だとしたら最高ですね!

とはいえ、8分の5か8分の7かという違いがあったり、サウンドの質感も全然違います。Led Zeppelinのほうはカラッと乾いた感じがする。ドラムの音量もそこまで大きくないミックスになっていて、「Chopsticks」ほどは前に出てない。でも両方ともめちゃくちゃかっこいい。

ちなみに「Four Sticks」の由来は、ドラマーのジョン・ボーナムが激しいビートを叩くために片手に2本ずつ、合計4本のドラムスティックを使ったからだそうです。すごい…。

日本語でchopsticksは「箸」なので「箸休めという意味かな?」とか、「次の曲と前の曲の橋渡し、という意味なんじゃないか?」みたいな、いろんな考察がネットにはあるようです。そこも想像力豊かでおもしろいなと思いました。

ただ、なぜ「和風だな」と私が感じたのか、自分で答えが出せていなくて。なので問いだけ置いていきます。アイデアがある方はぜひ教えてください!

みのミュージックをご紹介

あと思い出したのは「みのミュージック」という音楽解説チャンネル。みのさんが評論活動を踏まえた創作活動をしていて、日本的な音楽とは何かをテーマにした「おてもやん」という曲があるんですけど、それがちょっと「Chopsticks」を思い出させるんですよね。

太鼓から始まるし、民謡っぽい要素や和楽器を使っている。その意味で「おてもやん」のほうが箸っぽい感じがあるとも言えるかもしれない。関連楽曲としてぜひ聴いてみてください。

ずっと聴いているとヤミツキになる

このトークのためにずっと「Chopsticks」をエンドレスリピートしていたんですけど、聴き続けるとヤミツキになってきます。1時間耐久音源とかありそうですよね。作業用BGMにもいいかもしれません。

それで今回ちょっと調べてみようと思って、YouTubeで「稲葉浩志 Chopsticks」を検索したら…1件もヒットしませんでした! なので、もし「全世界で初めて稲葉浩志の『Chopsticks』をカバーしたい」という方がいたら、今がチャンスです!

あの、カバー動画を作ったらぜひ教えてください。拝見させていただきます!

無事、語りきれたのか…?

「友よ」に続いて「Chopsticks」も難しい曲だったんですけど、なんとか一応終わらせることができました。明日はしゃべりやすい曲が来てくれたらいいな~(切実)

それをお互いに祈って、明日また一緒にお会いしましょう。

ではまた。おつかれ!

【今回言及した作品】

  • 「友よ」
  • 「Four Sticks」(Led Zeppelin)
  • 「ねがい」(B’z)
  • 「おてもやん」(ミノタウロス)

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