稲葉浩志「Bicycle Girl」を語る|イナソロ一日一曲

動画書き起こし

イナソロ一日一曲!今回は「Bicycle Girl」。

うれしい!!! (笑)

今いちばん気になる曲だったんですよ。だから話せてうれしいんですけれども、好きですか? 知ってますか? 今日はたっぷり魅力を語りますね!

自転車に乗った少女への憧れ

自転車に乗った少女に…「恋」までは行ってないけど、憧れたり、気になったりしてる。そんな青少年の歌ですね。大学生ぐらいか、高校生ぐらい? もしかしたら大人かも。

「自転車の君」が私のところを通り過ぎ、甘い匂いだけを置いてったとか。

肩にかかった髪、舞い♪

…かわいいメロディーで歌われるところも好きです。

あとは、メールを見てほほえんだり、耳から垂れた白いイヤホンの線が揺れていたり。「いったいどんな内容なんだろう?」とか「どんな歌を聴いてるの?」とか気になって仕方がない。そういうときめき。甘酸っぱい歌ですね。みなさんはこういう経験ありますか?

B’zでいうなら「恋心」みたいな瑞々しい感情も味わえるし、「Classmate」みたいな、知らない空気をまとった「転校生」に恋するような歌とも似てるかもしれないです。

青春の甘酸っぱさと日常の思い出

似た経験をしているかどうかによって、この曲への思い入れって変わると思うんですよ。電車でも同じこと、ありますよね。いつも同じ車両に乗ると、ちょっと気になる人がいたりして…。そんな時は、この曲がすごく味わい深くなるんじゃないかなと思います。

私、最近実は追体験…あるいは疑似体験をしているんです。朝いつも同じ電車の同じ車両に乗っているんですが、そこに少女が…Girlがいるんです。私の場合は自転車じゃなくて「ヴァイオリン・ガール」ですね。高校生かな? 制服を着てるんですけど。白いマフラーに白いマスク、黒髪のポニーテールでバイオリンを背負ってる。

もし私が高校生だったら、こういう子にときめいてたかもな? っていう、そんな体験の仕方。だから、今変な感情を持ってるっていうわけではなくて(笑)。子供の頃にこういう体験してたら、気になってただろうな~って。これが「Bicycle Girl」で歌われる心だなあと思って、今この曲が気になってるんです。

でももう私も30歳で、おじさんに片足を踏み入れちゃってますから。甘酸っぱいというよりも、その少女が席に座れたら「座れてよかったね」っていう…慈しみというか、保護者目線で見ちゃいますね。そこに年齢を感じて、ちょっと切ないまではいかないけど、なんとも言えない気持ちになります。

歌詞の違和感、オトナのまなざし

でね? 私さっき「もし子供だったら」「ときめいてただろうな」と言いました。実は「Bicycle Girl」の歌詞には、大人の目線が含まれているんですが、これがちょっと変なんですよ。

望もうと望むまいと
僕らオトナになっていって
ある日ふとわかるだろう たぶん
せつなさや ほろにがさの愛しさを

ここ、急に時間軸が先に進む感じがあるんですよね。それまでは「自転車の君」にちょっと恋してる男の子の気持ちを綴っていたのに、いきなり大人になった未来の話を想像している。

主人公目線なのに、作者である稲葉さんの影がちらつく。そんな不思議で謎が残る歌詞だと思います。でも大人になって聴くと、そこがまたいいなって思うんです。めちゃくちゃわかるから、せつなくなる。

せつなさって、永遠じゃない。しかも「せつなさやほろにがさ」ってできれば避けたいもの。

でも、「実はそこに人生の本質があるかもしれないよ?」 っていう目線を投げかけてくれる歌になっています。だからこそ最後のサビが、この曲に奥行きを与えているんです。

これは「横恋慕」と同じアプローチですよね。あっちは「キミはアイツのものなのに、好きになっちゃった」っていう狭い視点から始まって、最後に「戦争のスイッチはON」とか世界レベルまでいきなり広がる。空間的な広がりがある。

ただ、「Bicycle Girl」は空間じゃなくて、時間的な広がりですね。今ここから先の未来、大人になった自分を想像してる。その対比もおもしろいですね。

「怒りがなければ描けない」

もう1個、この曲が気になってる理由があって…。『アイシールド21』っていう漫画が大好きなんです。最近読み返したんですけど、アメフトの漫画ですね。

桜庭春人くんというキャラがいるんです。王城ホワイトナイツっていう強いチームに入ったんですが、進清十郎っていうとんでもない天才レベルの努力家がいて、才能の差を痛感したり、モデルにスカウトされて表面的に人気が出ても実力が伴わずいじけたり…。

そんな「ほろ苦さ」を抱えてるキャラクター。そこから頑張って活躍する姿が感動的で私大好きなんです。

原作者の稲垣理一郎さんが連載終了から何年か経っての対談で言ってた言葉が印象的だったんです。

「今の自分に桜庭はもう描けない。怒りが消えてしまったから」

これにはグッときました…! 桜庭を描けたのは怒りがあったから。その「ほろにがい」感情がなきゃ生まれなかったキャラクターなんですね。

それが「Bicycle Girl」にも通じてると思うんです。「望もうと望むまいと 僕らオトナになっていって ある日ふとわかるだろう…」って。

若い頃の青臭い、甘酸っぱい感情は賞味期限がある。でもそこには大事なものが詰まってる。だから大人こそ、この曲を聴いてほしいですね。

青春の恋愛じゃなくても、手の届かないものに惹かれる情熱を昔ほど持ててるかな? と振り返ったとき、さらにこの曲の奥行きが増すと思います。

演奏もいいですね。ラストサビのあと「Hoo~Woo~♪」って稲葉さんの優しいコーラスが入って、その横をギターがまさに自転車のように走り抜けていく。

最後のやわらかな余韻は、「自転車の君」が残していった甘い香りのよう。「これは幻だったんだよ」「若い時だけなんだよ」っていう雰囲気を音楽で表現してる…本当にすばらしい傑作です。

改めて好きになった「Bicycle Girl」

この曲についてしゃべってるうちに、ますます好きになっちゃいましたね。最初は「今いちばん気になってる曲」って言ってたけど、もう好きです(笑)だからまたあとで聴き直そうと思います。

今日はあいにく雨で本物の「Bicycle Girl」は見られませんでした。まさに歌詞のとおり「自転車の君が現れない」ということですね。

もし近所で自転車に乗ってる人を見かけたら、ぜひこの曲を思い出してみてください。ではまた明日、別の曲で会いましょう。

おつかれ!

【今回言及した作品】

楽曲

  • 「恋心」 (B’z)
  • 「Classmate」 (B’z)
  • 「横恋慕」

コミック

  • 『アイシールド21』

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