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#3 Burning Love
エルヴィス・プレスリー風アプローチ
3曲目は「Burning Love」。なんか見覚えあるフレーズですよね? 何とは言わないですけれども…(笑)
「YOUNG STAR」のテンポに戻りましたね。ちょっとアップテンポで興奮する感じ!
でもメロディがすごく低い音域にとどまっていて。多分これはね? スティービー・サラスが稲葉さんに…
“エルヴィス・プレスリーのように歌って”
…って言ってると思います。この特典ディスクでもプレスリーの名前が何度か出てきましたね。1950-60年ごろに、アメリカで一世風靡した元祖・ロックスターです。
実はけっこう色気のある歌い方をするんですよね。今みたいな、ハイトーンボーカルや歪んだギターで編成されたゴージャスなロックになる前…。元祖ロック・ミュージシャンがエルヴィス・プレスリーというアーティストなんです。
インタビュー内容をふまえると、「Burning Love」でもプレスリーを意識して、スティービーが曲を作ってんじゃないかと想像します。
INABA/SALASは、稲葉さんの低音を味わおう!
INABA/SALASって、実は稲葉さんの低音をめちゃくちゃ堪能できるんですよね。これ、めちゃくちゃ良くて。稲葉さんの低音…本当に好きなんですよね。
「SING NEXT STAGE」っていう映画があったじゃないですか。稲葉さんが初めて声優に挑戦したやつ。あれを横須賀の劇場で私見たんですけど、帰り道、稲葉さんファンの女性2人が歩きながらしゃべってて、「稲葉さんの地声好きだからめっちゃ良かった」「上手だったね~」みたいな微笑ましい会話を聞いたんです。
要するに何が言いたいかというと、私も稲葉さんの地声が好きだからめっちゃわかる…!!! って思いながらその話を聞いてました。
…だから私は「Celica」が好きなんですよ♪ 『Maximum Huavo』に入ってる最後のほうの曲。あれのエピソードがあって、スティービー・サラスが、稲葉さんが歌入れしてる時にディレクションをめっちゃするらしいんですよ。INABA/SALASってスティービーが稲葉さんに指示をする。その指示っていうのが「Celica」という曲では…
“Koshi, Presly.”
(エルヴィス・プレスリーのように歌って!)
♪ルルルル~ルル~ルルル…っていうね!
多分そういうやり取りがこの「Burning Love」でもあったんじゃないかな? なかったにしても活かされてんじゃないかなって。稲葉さんも「これはスティービー、こうしてほしいだろうな」「こう歌ったらこの曲のメロディの色気が引き立つだろうな」っていうことを想像しながら…。
もうアルバム3枚目ですからね、INABA/SALASの!
そうやって作ったんじゃないかな~って想像しながら、またこの低音のリラックスした、それでいて稲葉さんの個性がにじみ出ているような歌を聴いていると、すごくいいなって思いますね。
稲葉さんの声の進化
やっぱねぇ、高いだけじゃないですよね、稲葉さんの声って! 特に『Highway X』以降はやっぱり年齢とともに喉の締まりがゆるんできて、なんかもうヴィンテージの楽器みたいに熟成されてきてる感じがある。それは喉だけじゃなくて表現力っていう意味でも。だから本当にいい曲だなって、この「Burning Love」思いましたね。
「野となれ山となれ」なんてね、なかなか歌として歌われる言葉じゃないのにこれを持ってくるっていうね! サビの終わりにそれをめっちゃ英語っぽく、英語感のある歌い方をしている。
これ、スティービーはどんな印象で聴いてたのかな? 本人に聞いてみたいなって思いますけれども。
…とある昔のインタビューで、「B’zの活動で提示したものは何ですか」という質問があって、それに稲葉さんはこう答えてました。
“日本語ロックの一つのやり方。”
「野となれ山となれ」は氷山の一角にすぎませんが、ここにもめっちゃそれが現れてるなって思いました。日本語ロックの一つのやり方…!
女性版・Hard Rain Love!?
歌詞は、浮気を咎める女性の歌。でも、この状況を望んでいるのは…浮気されて、浮気し返す状態を望んでいるのは…実は自分なんじゃないか?
そんなふうに、急に視点が切り替わるようなところがドラマチックというか、楽しいまである曲ですね。
「もう変わるなんて 散々喚いてたじゃない」
って最初に歌詞がありますが、私が最初見た時って浮気の歌だとは思わなかったんですよ。
「夢を叶えるために私は頑張るって言ってたけど、君あんま頑張ってないね…」みたいな、ちょっと皮肉っぽい曲かなって思ったら、まさかの浮気を咎めてるっていうね。「あっ、そっち?!」ってなりました(笑)
で、「シャツから知らない匂いが舞い」とかあるんですけど、このサビがですね…?
Burning Love… 神様…この感じ…どっかで見たことあるな。
タイトルも “Burning Love”。
燃える…燃え上がる愛…
炎上…炎上LOVE??
“Hard Rain Love”?!
この曲は “Hard Rain Love”のスピンオフか…?
女性主人公版のほうか!?
…みたいな。もうね、多分言ってる人いると思いますけどね(笑)
なんかこの歌詞の世界観、絶対エレベーター上がっていって、ミントの香りのする部屋に行ってますよね(笑)これ「Hard Rain Love」ですよ絶対(※冗談です)
稲葉さんの歌詞における女性主人公
「もしかしたらこの感じを望んでるのは私なの?」という歌詞、ちょっと引っかかるんです。
「私が犯人なのか?」という疑いがよぎるシーンですが、「かんじ」っていう曖昧な言い方でちょっと自分の非を和らげてる感じが特異です。女性主人公だからちょっと女性に甘いのか優しいのか…稲葉さんらしいところが出てますね(笑)。
というのも、たとえば「JEALOUS DOG」って男のほうは「犬」って言っちゃう。犬ってね、ちょっとみすぼらしい感じで描いてるんだけど、女性主人公になると「Butterfly」って、ちょっと上品な美しい蝶々っていうふうに描いちゃうみたいな。
それに加えて今回は…「罪」じゃなくて「感じ」なんですよね。だって男の主人公だったら、多分「罪」っていう言葉で浮気とか不倫とかを描いてきたのが稲葉さんですから…。ここも女性主人公ならではだと思います。
加えて、稲葉さん歌詞では、女性主人公って実は、あんまり葛藤をしない。もう本当に最初からスタンスが決まってて、思考が淀みない。そんな印象を今まで受けていました。
「Butterfly」とか、あと浮気し返す「アクアブルー」、それから「マイミライ」「この手をとって走り出して」などがそうです。…まあ「アクアブルー」のように浮気/不倫をするとしても、迷いのない感じっていうのが、稲葉さんの描く女性主人公なんです。
けれども「Burning Love」では、「もしかしたら私が原因?」という “もしかしたら” が入っている。迷いが入っている! そこから深みにはまっていく感じ…。そこがちょっと「プチ異色な稲葉作品」になってるなって思いました。
笑って聴ける不倫ソング
まあ、女性…ね、男から見た女…。
阿木燿子さんっていう、山口百恵さんとかジュディ・オングのヒットソングを手がけた作詞家が書いた「魅せられて」っていう曲がありまして。
「好きな男の腕の中でも 違う男の夢を見る」
…私はこの歌詞のせいで、極端な女性観を植え付けられてしまったので…。
今回稲葉さんが「Burning Love」で描いたような、“浮気したい女の人”がいたとしても…
「私、知ってるぜ」「驚かないぜ」
みたいな…達観しています(※耳年増ともいう)
まぁ、世の中にはいろんな不倫ソングがありますよね。でも「Burning Love」は、英語っぽい言葉の響きとかも相まって楽しく聴けてしまう! そんな1曲だなって思いました。
野となれ山となれ~♪
#4 DRIFT
バラードなのにファンキー!
4曲目はDRIFT。ここに来てバラードですね。ちょっとテンポが一気に落ちます。”EVERYWHERE”よりも遅いですね。でもやっぱりビートが太くて強靭なのが、稲葉サラス印ですね。
稲葉ソロの『Peace Of Mind』というアルバムを聴くとわかるんですけど、バラードでもやっぱりファンキーでネバっこいグルーブ……。演奏をしているのがスティーヴィー・サラスだなって思います。
で、この“DRIFT”という曲、B’zで近い曲はなんだろうと思ったら、『DINOSAUR』に入っている「Purple Pink Orange」かな? 壮大なバラードですけれど、これ聴き比べたらたぶん面白いと思うんです。
松本孝弘さんもファンキーな曲をたまにやるんだけど、スティーヴィー・サラスほどネバっこくはなくて、あくまで上品な感じがある(下品って言っているわけではありません、スティーヴィー・サラスを…!)
なんかでも、やっぱりブラックミュージックの色濃さっていうのが違うなって。そんなB’zとスティーヴィーの違いがわかるのが、”DRIFT”と”Purple Pink Orange”かな。歌ってるのも稲葉さんだから、対照比較ができる。
松本さんがプロデュースするとこういう音楽、サラスがやるとこういう音楽っていうのがすごくクリアになる比較だと思うので、ぜひ聴き比べてみてください。
切ないメロディと歌声
サウンドはそんな感じなんですけど、この曲、メロディが切ない…!! 私、ちょっと史上最高クラスに切ないなって思いました。
「覚えてる いつか無邪気に」
ここのメロディーがめっちゃキュッてくる…!!
最後のサビなんですけど、そこだけなんか高い音になるんですよ。そこが「うわー…!」ってなりましたねぇ。
あと最後に“Yeah Yeah… Hey…”みたいなのがあるんだけど、ここもすごくメロディラインが美しかったですね…。稲葉さんの声もいいですね…。
私、『CHUBBY GROOVE』で好きなのは“My Heart Your Heart”っていう曲で、これもすごくメロウなバラードなんですけど、それと同じ良さを感じました。
スティーヴィー・サラスはノリのいい曲も、こういう美しい曲も書けるのが本当に…「稲葉さんとやってくれてありがとう!」って思います♪
歌詞に描かれる漂流と孤独
“DRIFT”っていうのは「漂流する」という意味です。「ドリフターズ」はお笑いでも漫画でもありますが「漂流者」ってことですね。だから「DRIFT」の歌詞にも漂流の描写があります。
「波の狭間 揺れる漂流船」
という、絵画のような情景。波の上に船があって……それが、クロード・モネのような光の芸術っぽい印象というよりは、水墨画って感じがするんです。和風でモノクロで、濃淡がすごくあって、飲み込まれてしまいそうな深みのある歌。
稲葉さんが、また別のインタビューで、「歌う時は一枚の絵を思い浮かべながら歌う」と語っていたことがあるんです(昔の話なので今は不明)。この曲もまさに、孤独な海の絵を思い浮かべて聴きたい曲ですね。
自責と人生のテーマ
“DRIFT”=「漂流(する)」
「波の上 揺れる漂流船」「日々にとらわれたまま」
…なんか、人生の壮大なテーマを歌っていますね。そういう意味では『FRIENDS III』的な成熟を節々に感じます。『FRIENDS II』とかでちょっとやんちゃだったのに対して、大人になってるっている。
それが『MAXIMUM HUAVO』との比較でも同じことが言えそうな気がしています。
「あなたをひとりにしたのは僕なんだ」という、自責の念から抜け出せない感じ。「流れ流れ どこに行くの?」っていう人生の壮大なテーマを歌っている曲なんですね。
B’z「Daydream」と雰囲気が似ていますが、“DRIFT”は基本孤独であるようです。誰かといるのかどうかの違いが大きいけど、これは完全に孤独。「FRIENDS II」や「FRIENDS III」の大人っぽい熟成を感じさせるような、そんな空気が流れています。
歌詞はまだ掘り下げられそうですが、今日はちょっとメロディーと歌声にやられちゃったので、この辺で勘弁してください(笑)。最後のサビが本当に美しいから、そこを繰り返し聴きたい曲ですね。
「DRIFT」はそんな感じです!
#5 LIGHTNING
韻で加速する勢い
5曲目は「LIGHTNING」。再びアップテンポになりますね。”ONLY HELLO”以外のスローバラードは “DRIFT” だけということになりますね。
この”LIGHTNING”を聴くと、今回はINABA/SALAS 1枚目の『CHUBBY GROOVE』のシンプル路線に回帰したなって感じます。2枚目の『Maximum Huavo』はかなり攻めた、複雑だったり、いろんな派手で現代的な音作りをしていて、「挑戦的なアルバムになってます」とステーヴィー・サラスも言っていました。
その攻めたギタープレイを「もっと欲しい」と言ったのは稲葉さんらしいですね。このように、2枚目はすごく挑戦をしていたんだけど、1枚目はもうちょっとシンプルな、王道を行く感じだと思います。こういうシンプルな曲だからこそ、INABA/SALASという2人の自力に私たちは圧倒されるわけですね!
歌詞は、めちゃくちゃ韻を踏んでいますね。
「がむしゃらに生きてるから」
「疲れ知らずだって噂」
「飾らない言葉で修羅場」
「u」「a」「a」の3つの文字で韻を踏んでいます。
人からどう見られようと好きな服を着ていたい、という歌詞は「煌めく人」に似たフレーズがあります。
「さあ どのシャツを選ぶ? そこは自己顕示力に従え」
これは私の大好きな歌詞で、大好きな世界観です。我が道を行く。
静かに見守る「僕」の存在
で、そんな「男」…かと思いきや、おそらく女性を描いていますね、男性目線で。
「僕がそれをわかってるってこと できれば知っといて欲しい」
その女性は、無理しちゃうというか、懸命に生きてるから誤解されちゃう。でもスタイルは曲げない。
そういう意味では「LADY NAVIGATION」的な、凛として美しい女性。
そんな人を思う「僕」。「僕がそれをわかってるってこと、できれば知っといて欲しい」という、1歩引いた感じがまたいいですね。見守る感じで、静かに相手を恋慕うような雰囲気があって素敵です。
…ここはB’zだと「JOY」ですね!
「今 誰に本気で怒るの 涙で頬を濡らして取り乱す あなただけを思うなら 満ちてくる JOY」
こういう世界観も大好きです。大好きな世界観が2つ畳みかけてきました。私はもう好きにならざるを得ません。
この曲(”LIGHTNING”)も、B’zだと『NEW LOVE』あたりに入ってそうな雰囲気があるんですよね。なんとなく「デウス」みたいな印象を受けました。
「アナタイナヅマ」っていうカタカナのフレーズが、稲妻のように心を貫く、そんなナイスな曲になっています。
【今回言及した曲】
- #3 Burning Love
- YOUNG STAR(INABA / SALAS)
- Celica(INABA / SALAS)
- Hard Rain Love(B’z)
- JEALOUS DOG
- Butterfly(B’z)
- アクアブルー(B’z)
- マイミライ
- この手をとって走り出して
- 魅せられて(ジュディ・オング)
- #4 DRIFT (INABA / SALAS)
- EVERYWHERE (INABA / SALAS)
- Purple Pink Orange (B’z)
- My Heart Your Heart (INABA / SALAS)
- Daydream(B’z)
- #5 LIGHTNING
- ONLY HELLO(INABA/SALAS)
- DRIFT(INABA/SALAS)
- LADY NAVIGATION(B’z)
- JOY(B’z)
- デウス(B’z)
- 煌めく人(B’z)
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