イナソロ一日一曲。今回は「Little Flower」
思ったより早くこの曲が来てしまったなと思っております。イナソロ一日一曲という企画の曲順はシャッフル再生で決めてまして、稲葉さんの曲を全曲ぶち込んだプレイリストをシャッフル再生し、流れた順に動画をつくっています。それで7曲目にきてしまって、もうちょっと練習してからがよかったな~と思っています。
大事すぎて語れない
というのもやっぱりこの曲はすごく大事ですね。今の自分にとって大事すぎて、なかなかうまく語る自信がなくて…。距離が近すぎるんですよね。もう本当に自分の…軸みたいなものと同じところに「Little Flower」という曲があって、だから客観視できない。
ちょっと距離が離れてたら「あ、この曲はこうなってるな!」っていうふうに観察ができるんだけど、ピタッてくっついてたら逆に言葉にできないっていうのがすごくあります。
だからもう今日は「うまくしゃべれねーや絶対!」と思って何も準備してないです(笑)あまり期待しないで聞いてやってください。
今にも壊れそうな心
やっぱりすごく繊細な曲ですね。繊細で優しくて温かみもあって、でも今にも壊れてしまいそうな…。本当にそうですよね。だって、「ぽっかり空いた穴から 何もかもこぼれてる」っていう歌詞のとおり、もう出だしから壊れてるんですよね。
でも、なんとか人とのつながりの中で、その隙間を埋めていく。優しさとか激しさ、寂しさのような、いろんな「気持ち」で埋めていくんです。人とつながることでいろんな感情を知って、心の隙間が埋まっていって…。「誰かのために生きる」っていう、あくまで暫定解なのかもしれないけれど、ひとつの真実のような…。人としての生き方の真実にたどり着いたみたいな、そういうすごーく深い歌詞だなと思ってます。
最初からそういう心を持つことができた幸せな人たちは、この歌詞にピンとこないんじゃないかなっていう気がしますね。「なんでそんなに悩んでるの?」って。「寂しい時は寂しいし、嬉しい時は嬉しいはずじゃん」って思うかもしれない。でもどうしても、それがわからない人っていうのがいるわけですよ…私のことですけど。
「う、うれしいって…なんか今うれし…なんかこの感情はなんだろう? あ、みんな『うれしい』って…こういう時『うれしい』って言ってるなぁ。じゃあ『うれしい』んだろうな。あ、私は『うれしい』です」みたいな。逆に「こういう時は寂しいんだな。はい、私は『寂しい』です。」
…みたいに、感情をあからさまに他者から学習しているような感じ? 人間に見えて人間じゃないというか…。そんな印象がありますね、主人公にも自分にも。
だって、「本当にはうれしくもかなしくもないようなこのこころ」っていう歌詞があるんですよ。これはまさに、そのことを表していると思うんです。「嬉しいです」「悲しいです」って思ってるし振る舞ってるだけど、「本当にはうれしくもかなしくもないようなこのこころ」。
それを歌っているし、歌にして言葉にしてるっていうことは、やっぱりそこに違和感というかなんらかの意識がきっと稲葉さんの中にあって…。
「そこを私たち聴き手がどう受け取るか?」
それがこの曲の深みになっていくと思うんですけれども…すごくわかりますね。わかるし、心にしみる。だから語れないんですよ! どう語っていいか本当にわかんない、この曲は(笑)
真っ昼間のスタバで聴くべし!
イナソロ一日一曲でしゃべる曲は、全部ノートにいったんアイディアとか書くんです。だから「準備してない」と言いつつも、この曲もアイデア・ノートにだけは、何かしらフワーッと思ったことを書いたんです。
その時に、真っ昼間のスタバで書いたんですね。もう、この曲と正反対じゃないですか、その時点で。こんなに繊細な曲なのに…渋谷のですよ? 若い人とかビジネスパーソンがたくさん歩いている昼下がりのカフェの明るい部屋の中で、陰にこもってヘッドホンから「Little Flower」を流し、思いを馳せながら聴いてると…なんか周りの人たちがやっぱり違って見えてきますね、自分と。
いつも以上に浮き彫りになりますよね、自分の暗さが。だから、話それちゃうけど、ぜひやってみてください。「Little Flower」が好きな人は、たぶん夜、家に帰ってきて、静かな部屋を暗くして聴くのが一見いいシチュエーションに見えるかもしれないけど、真っ昼間のスタバでヘッドホンして聴くとめっちゃ映えるんですよね。
周りが明るいんだけど逆に自分だけ暗くなるっていう…「逆スポットライト」が当たってる感じがして、めっちゃ浸ることができる。そうするとどんどん思考が深く、深く、深く進んでいって、気づいたらノートに怨みごとみたいなの書いてましたね(笑)
何を言ってるんだろう私は…でもそういう人間なんです。そういう人間で、本来。でも、最近やっといろんな人とかろうじて必死につながる中で…優しさとか激しさですよね、本当に。「仲がいい」みたいな前向きなことだけじゃなくて、時には怒られたり、逆にこっちが怒ったりとか。
相手の無神経さにお互いが傷ついたり、いろんなつながり方をしていろんな感情を見せ合う中で、そこに何か尊さを感じるっていうのが、理屈じゃなくわかってくるんですね。
「目を覚まそう」という歌詞が心強い
だから「目を覚まそう」っていうこの歌詞のとおり、なんか目が覚めたなぁ…っていうのを感じる。その心を一人で感じ取るのは難しかったかもしれない。でも「Little Flower」っていう曲を昔から知ってて、聴き続けて、今やっと「あ、この曲と自分の心が重なったな」っていう感じがしてですね。
だから心強いというか。一人だと抱えられなかったかもしれないですね、他者とのつながりによる温かくて嬉しい感じ、前向きな感じ…。難しいね、この曲語るのは本当に。
「冷血」から「Little Flower」への物語
『マグマ』っていうアルバムは「冷血」から始まって「Little Flower」で終わるわけですけど、これは一人の人間の成長、あるいは下手したら治癒の物語なのかもな…っていうのをすごく感じますね。
2023年に開催されたシアン展で、稲葉さん直筆の「冷血」と「Little Flower」の作詞ノートが飾ってあったんですが、「冷血」は元のタイトルが「Cold Blooded Animal」だったんです。冷たい血をした生き物…だからもう、「人間になる前」みたいな。
一方の「Little Flower」はというと、「Awaken」。覚醒ですね。
だからやっぱり、人間の手前だった一人の男がいろんな感情に振り回されて、でもその中に愛情とかもあって、ピュアな思いもあって。でも「台風でもくりゃいい」みたいな投げやりな思いも経て、ぐっちゃぐちゃになって必死にもがいている中で、やっと「愛なき道」で長い道を突っ走る決意をして。
そうして辿り着いたのが「Little Flower」という境地ですね。穏やかで、ピースフルで、ラブリーで…。稲葉さんのMCみたいになってきた(笑)
…失礼しました。でもそんな感じがします。「治癒」なのかな。人としてあるべき…ひとつの理想ね? 絶対的な理想なんて作るべきじゃないと思うので。あくまでひとつの理想的な生き方。健康な魂をやっとの思いで手にすることができた男の物語なのかなって、『マグマ』っていうアルバムは。
そしてそれは自分にも本当に重なっていて、なかなか人としてあるべき振る舞いがわからず傷つき、時としてきっと人を傷つけ…。そんな自分が嫌になり、苦しい日々をずーっと思えば過ごしてきたけど、そこからようやく出口が見つかったような気がしていて、それが「Little Flower」っていう曲と重なるんです。
このかんじって、全稲葉ファンの何人に分かるのかな? 5パーセントもいないんじゃないかなという気がする。100人に5人、1万人に…500人? いや多すぎるな。0.5パーセントぐらいしかいない気がする。
もし「Little Flower」の苦悩と繊細さと優しさに心がじわーっとくる仲間がいたら、ぜひコメント欄で教えてください。そんなつながりがきっと私たちを強くしてくれるんじゃないかなと思います。
本音を抑えつける主人公
今の自分に一番響く歌詞は、「君のわかりやすい笑顔が意識の底に語りかける あなたのその胸を裂いて どろどろのこころを見せてと」です。本音を見せてないんですね、主人公は。抑圧してる。たぶん見せてるつもりでいたんだけど、見せてないことを見透かされてる感じ?
だからこそ「くちびる」みたいな歌詞では、「僕のインチキもイカサマもひとつ残らずあばいて」っていう歌詞があったりして。常に何か押さえつけている自分がいて、それを解放してしまえと言ってくれる存在が自分以外の誰かであって。その経験は私はまだないですね、正直なところ。だからまだ人生道半ばすぎるなっていう感じがして…。
そんな私にとって「Little Flower」っていうのは寄り添ってくれるし、今すごく重なってるし、でもまだ知らない世界を想像させてくれるような曲。理屈はさておき、寄り添ってくれて癒してくれる…そんな大事な曲ですね。
ライブでの圧倒的ダイナミズム
この曲はライブで化けましたね。タイトルに騙されて「Little Flower」ってこじんまりした曲かなと思ってたんだけど、すっごいダイナミックです…! 他のロックな曲よりもダイナミックでしたね。
すごく繊細なファルセットみたいな、透明な透きとおった歌い方で始まって、でも一気に静から動へ切り替わる。それがやっぱり感情の起伏を表しているようでもあって、グッと心にきました。
面白いのは、別に号泣するような感動じゃなくて、なんか棒立ちで「あぁ…」と何かに気づいたような感じ。真実にスッとインストールしてくれるような、不思議な感動をくれる曲ですね、「Little Flower」って。
トクちゃんの…徳永さんのウッドベースがね。うますぎないのもまたいいんだ、これ(笑)弓で弾く間奏のシーンがあるんですけど、プロのコントラバス奏者と比べたらあどけない音をしてるなって思うんです。でもそれがまた、完璧じゃないけど美しくあろうとする感じを感じさせてくれて、逆にグッとくるっていう!
だから『只者』の特典ディスク版、まだ観てない人は買ってください! お願いします! それを見てからまたコメント欄に感想ください。バーミリオンレコーズの回し者みたいになっちゃうんですけど(笑)
「Little Flower」と『マグマ』
ライブも最高だし、でもCDの抑制の効いた歌も何度でも聴きたくなるし、だから「Little Flower」は本当に自分にとって大切な曲だなと思います。
でもだからといって「冷血」の魅力が損なわれることは全然なくて。全部…「冷血」みたいなドロッとした感情も、「Little Flower」の健やかになりつつある姿っていうのも、全部人間なんだなっていうのを感じさせてくれる。それを教えてくれる最高に…深い。深いというと浅くなっちゃう…。これ、難しいね。
最高に…
難しいな。ダメだ、この答えは今出せないですね。私にとって『マグマ』がどんなアルバムなのかっていうのは、今は答えは保留にしようと思います。イナソロ一日一曲で全曲しゃべり終わった後で見つかってるかもしれないし、もっと人生経験を経てからしか見つからないかもしれない。それぐらい大切な曲、アルバムに出会えたことが本当に幸運だと思うし、それを制作してくれた稲葉さんに感謝しかないです。
だから、そういう経験を経てるからこそ、自分に何ができるかっていうのを、いま30歳ですけれども、これから真剣に考えて、いろんな人にもらったものを返していきたいなって思いますね。
…はい! じゃあ長くなりましたがそんな感じで。
また明日、別の曲でお会いしましょう。おつかれ!
【今回言及した曲】
- 冷血
- 台風でもくりゃいい
- くちびる
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